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わすれもの

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まだ、わすれないわすれもの。もう、わすれそうなわすれもの。ちゃんとあたらしい歌も入っています。

高校生日記


君にとって僕は何だろう
僕は君じゃないから分からないけど
好きとか嫌いとかじゃなくて
君の中でどれほど当たり前なのか

なくてはならない人ですか
居ても居なくてもいいですか
代わりはいくらでもいますか
二度とは会えない人ですか

この国で僕は何だろう
僕はえらくないから分からないけど
意味とか理由とかじゃなくて
僕が此処にいることは当たり前なのか

なくてはならない人ですか
居ても居なくてもいいですか
代わりはいくらでもいますか
二度とは会えない人ですか

名ばかりの荒野


恐れないで行けばいい 時が撫でたあとの
名ばかりの荒野だ

土にまみれた歴史の真相はいざ知らず
土踏まずの減ったこの身に何を悟れと言えようか
そのまま目を開け行けばいい
変革の火花に予告はない 戻れない

恐れないで行けばいい 風が撫でたあとの
名ばかりの荒野だ

草花の絶えた大地の真相はいざ知らず
草いきれも知らぬこの身が緑に何を求めよう
このまま目を閉じ行けばいい
生命に再生釦はない 戻れない

恐れないで行けばいい 時が撫でた後の
名ばかりの荒野だ
先に生きた人たちは 道を残すだろう
恐れないで行けばいい 夢も醒めた後の
名ばかりの荒野だ

土地の者ならいざ知らず


闇夜に道を尋ねられ
あかりを差し出しました
頼りの地図は手の汗で
インクが滲んでおりました

土地の者ならいざ知らず
これでは辿り着けまいと
私はペンを取り出して
導を書き入れました

なんの礼には及ばぬと
たばこに火をつけました

土地の者ならいざ知らず
これでは辿り着けまいと
頭を深く下げられて
私は少し困りました

頭を上げたその手には
ものみの塔とありました

半導体に拝礼を


それは二十世紀の末でした
届かぬ距離がなくなりました
叶わぬ願いを抱きしめて
夢みた時代が終わりました

今朝も今宵も明日も今も
人は小首をうなだれて
片手の平におはします
半導体に拝礼を

神は願いをかける先として
ゆめゆめ畏れなくなりました
地平の向こうもすぐそこで
夜更けも夜明けも忘れました

家でホームで車で店で
人は小首をうなだれて
片手の平におはします
半導体に拝礼を

そして遠いも近いも見失い
誰もが仲良しになりました
壁を侵してでも手を取り合って
胸さす電波に焼かれながら

道でトイレでベッドで風呂で
人は小首をうなだれて
片手の平におはします
半導体に拝礼を

錯乱の友人


かねてから気づいてはいましたがあなた錯乱していますね
隠しても隠れないことですが誰も格好よく生きたいもの

すでにその顔がその瞳が
正しい道ばかり選ぼうとしています

自分の居場所が見つからなくて 自分の声さえ聞き取れなくて
自分の顔さえ選べなくて 自分の言葉が使えなくて
泣いたりしている僕の友達

初めから気づいてはいましたがあなた錯乱していますね
見慣れても馴染めないまちの中彼に格好よく見せたいもの

すでにその顔がその仕草が
誰にも嫌われず生きようとしています

自分で心が決められなくて 誰かの言葉にしがみついて
自分の心を頼れなくて 誰かの言葉に裏切られて
泣いたりしている僕の友達

昔から許しては来ましたがあなた錯乱していますね
隠しても隠せないことですが誰も格好良く生きたいもの

つねにその顔がその口癖が
自分の正しさだけを押しつけています

自分の正義が見つからなくて 自分の正義が行き詰まって
自分の正義に縛られて 自分の正義に裁かれて
泣いたりしてる僕の友達

31


目指してもいないのに
迷わず僕らはひとつひとつ歳をとる
人生の終わりなど
誰にも不明で誕生日は通過点

びくびくして大騒ぎして迎えたのは30の誕生日で
それはまるでゴールのように見えたのに
何も終わってくれなかった
騒いでいたのは自分一人だった

何が終わったらよかったんだろう
何を終わらせたかったんだろう
まだまだ老い先長そう

潮時や引き際や年貢の納め時
あてつけな言い回し
祝福のないゴール
独りの静かな幕引きこそ通過点

びくびくして大騒ぎして迎えたのは30の誕生日で
その後何故かゴールが遠く見えるのは
やっと大人になったから
孤独の意味に気がついたから

何が終わったらよかったんだろう
何を終わらせたかったんだろう
まだまだ老い先長そう

カボチャ


ふたこと目には愚痴がこぼれる
また誰かのせいにする
そんな自分が嫌いと言えるそれならいいかと思う

喧嘩となれば誰も彼もが自分に夢中になれる
そんな誰かが羨ましくて
またひそかに爪を噛む

カボチャを食べる美味しく食べる
あまりに恰好悪くて泣きそう

好きになれない相性かしら
また嫌われた気がする
食わず嫌いの自分も食えずいつものソースをかけた

好きとは言えず嫌いでもない
また長くは付き合わない
そんなつもりの人はいるけど僕らとカボチャは長い

カボチャを食べる美味しく食べる
あまりの恰好悪さに泣きそう
あなたとただ話がしたくて矢も楯もたまらず
カボチャを食べる美味しく食べる
あまりの恰好悪さに泣きそう

好きや嫌いが全てじゃないとまた自分に腹を立て
苦い虫でも甘い汁でも残さず頂く所存

カボチャを食べる美味しく食べる
あまりの恰好悪さに泣きそう

40


しっかりと目があったのに
逃げるようだねよそを見た
いくらか年をとった分
求めすぎなくなったねと笑いあったから

愛しく思える人が増え
少しはやさしくなったかな
今にも肩がふれあうのに
手も握らないふたり

果たせなかった約束や
今更言えぬ夢のこと
語りきれない過去の分
分かりあうのも容易いと笑いあったから

愛しく思える人が増え
少しはやさしくなったかな
今にも膝がふれあうのに
見て見ぬ振りのふたり

誰かのせいと言うごとに
許せるようになったねと笑いあったから

愛しく思える人が増え
少しはやさしくなったかな
今にも息がふれあうのに
目は合わせないふたり

永遠


自分を探していろんなとこへ行った
お金に飽かして遠くへも行った
未来の曖昧な僕らに辛酸の雨が降る
これからどこまでここからどこまで
永遠を見たことはないけれど
永遠に続きそう

身の程を拡げにいろんなとこへ行った
お金に飽かして珍味も食べた
希望の曖昧な僕らに流行の風は吹く
これからどこまでこのままどこまで
永遠を知ることはないけれど
永遠に続きそう

身の丈を計りにいろんなことをやった
お金に飽かして空も飛んだ
自分の曖昧な僕らに年越しの夜は来る
これからどこまでここからどこまで
永遠に知ることがないようで
永遠は続きそう

ほら風が来ているよ


街ではあかりが邪魔をして
星は沢山見えないと言う
すなわち端から諦めて
星を数えたことがない

今風が吹くのをどこで感じようか
こわばった背中か冷えた胸か選ぼう

星にも名前があるという
昔誰かが言い出したままの
すなわち端から諦めて
星に名付けたことがない

今風が吹くのをどこで感じようか
強張った背中か冷えた胸か選ぼう

コバヤシさん


メトロの売店 朝八時
僕が顔を見せれば
出て来るんだぜセブンスター
みめうるわしき売り娘
あともし僕が二十年くらい
早く生まれていたら
どうだろうねえコバヤシさん

メトロの売店 夜八時
仕事帰りに寄れば
お疲れさまとセブンスター
みめうるわしき売り娘
あともし僕が二十年くらい
早く生まれていたら
待ち伏せするねコバヤシさん

メトロの売店 シフト制
それに合わせて寄れば
苦笑いつつセブンスター
みめうるわしき売り娘
あともし僕が二十年くらい
早く生まれていたら
どうだろうねえコバヤシさん

おつり


ある朝でした あれからでした
通勤駅の売店に寄り
煙草を買っておつりをくれた
コバヤシさんと目が合いました

面食いなんておこがましくて
身の程なりの人生でした
コバヤシさんの手に触れたくて
千円札を使うのでした

この手のひらとその指先が
ふれるすれるこすれる時に
人は何かを交わすのですね

通勤だから毎日通る
セブンスターを毎日買って
いつからでしょうお金を出すと
セブンスターが差し出されます

千円札は大きすぎると
私はやがて気がつきました
ちょうど良いのは五百円玉
おつりとあわせ二回のチャンス

その手のひらとこの指先が
ふれるすれるこすれる度に
人は何かを交わすのですね

細かくなってごめんなさいと
百円玉が七つもあって
ざらざらざらと注がれたのは
嬉しいような悲しいような

この手のひらとその指先が
ふれるすれるこすれる時に
その手のひらとこの指先が
ふれるすれるこすれる度に
人は何かを交わすのですね

値上げ


タスポさんがうまれて
自販機は使いません
煙草屋コンビニ駅売店が贔屓に
だけどだからそのおかげで
私たちは出会えたようなもの ありがとう
政府ですか国家ですか知りませんが
一日に一度駅売店に会いに行きます

健康上の理由経済的な理由で
煙草を吸う人その数自体激減
しかもこの度の値上げは
四割増で一日一箱は買えない
政府ですか国家ですか知りませんが
一日に一度駅売店に買いに行くのが
出来なくなる会えなくなる来月から
何も買わずに駅売店に行ける筈もない

低所得の客と売り子の
艶の足りない売れない物語だとして
政府ですか国家ですか知りませんが
私をあの人から引きはなすつもりですか
許しますか許せますか誰だろうと
あの人だって買う時にしか笑ってくれない

Information

型番:A107
発売:2010年 09月
価格:¥1,572

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